社内公用語英語化!スローガンで終わる企業
社内公用語英語化といっても、スローガンとして、掲げるのは簡単です。しかし実際に企業内に社内公用語英語化を定着させるには。様々な試行錯誤がありえます。なんらかの指標なしに、社内公用語英語化を推進させるのは、航路のない船旅と同様、途中で座礁してしまう可能性が高いです。
國際言語管理(言語監査)
公用語としての英語とかフランス語とか、実際にある国に導入するにあたっての管理手順が、国際標準として存在しています。会社内で公用語を設定して、運用する場合も、この国レベルでの公用語の管理手順にならうのが合理的です。様々な利害調整をしながら、公用語化を進めていける点で、企業でも十分に参考となる内容だからです。
国際言語管理手順は、公用語を設定しようとする際に、以下の手順を段階的に踏まえます。
1.言語管理チームの発足
2.言語管理アウトラインの決定
3.言語環境分析・ニーズ分析
4.言語現有能力分析・強み弱み分析
5.言語対応プログラムの提案と決定
6.対応プログラムの実施とモニタリング
7.一連の言語管理実践の成果の確認
(Ⅰ)1,2では、英語化のためのプロジェクトを考える合議体のチームを発足すると同時に、英語化実施に向けての、ゴールの設定や計画の立案を行います。
(Ⅱ)3,4では、どういう言語を公用語とすることが、企業にとって有益か?公用語となるべき言語が、企業の進出する市場において、製品やサービスの市場占有率にとってどのくらいの価値を有するのか?などの市場と言語との関係性を分析します。
(Ⅲ)5,6では、1から4までの工程によって設定された公用語の浸透にむけて、どういう教育プログラムを採用するのか?を決定します。その後この教育プログラムを企業内で実施して、モニタリングを行います。モニタリングの結果、何が不足しているのか?を分析して、不足している要素を教育プログラムに補充していきます。例えば、TOIECだけでは、会話力が不足するということが、判明したとします。この会話力を補充するための、教育プログラムやテストを途中から、加えていくことになります。
最後に、7で、社内公用語英語j化の成果が、当初の計画時と比べてどうだったか?検証する工程となります。
この流れは、あくまで、国際標準的な公用化に向けての、流れになります。実際には、オーナー企業かどうか?企業の置かれている業界などによって、公用語化にむけての流れは、異なります。
社内公用語 英語 失敗
社内公用語 英語 失敗のフェーズ
社内公用語英語化についての失敗は、(A)英語化そのものに失敗してしまうこと(B)英語化そのものは成功しても、英語化に伴い、本業の競争力を低下させてしまうなど、英語化そのものとは別次元で失敗してしまうことの2次元で問題となります。
(A)英語化そのものに失敗してしまうこと
①「NO english NO job」= 「英語なくして、仕事なし」といったような社内公用語英語化のスローガンと②トップダウン方式の社内公用語英語化へ向けての業務命令だけでは、英語化は失敗に終わるリスクが高いです。社内の公用語を英語に変えるということは、社内で英語ができる社員とそれ以外の社員との間に、ある種の格差社会を作り出すことを意味します。すでに役職を拝命している社員については、既得権を保身するという姿勢から、英語化にむけての反対勢力に立つことも、考えられます。
①のスローガンだけではなく、具体的プログラムを伴ったプロジェクトとして、社内公用語を英語化する準備を進めていかないと失敗します。②のトップダウン方式では、英語の苦手な社員で会社にとって優秀な社員が、会社を退社するリスクもあります。そのリスクを恐れるあまり、英語化を断念することも起こりえます。
英語に苦手な社員向けに、教育プログラムや英語研修を織り込んだプログラムを組み込みます。随時、英語化に関して、モニタリングや面談を行い、英語化に当って、どういう点に悩みがあるのか?個別具体的な聞き取りが必要となります。これらの会社の作業を通じて、反対勢力の芽を早いうちから摘むことと、社員の退社のリスクを抑えることにつながります。
(B)英語化そのものとは別次元で失敗してしまうこと
社内公用語を英語化するということは、あくまでも進出先の国の公用語が、英語であった場合に、進出先の現地の顧客や従業員との意思疎通ツールとして機能させることにとどまります。進出先の意思疎通ツールだけでは、進出先のドメスティックな文化や価値観まで共感した製品やサービスを提供することができずに、撤退することも起こりえます。楽天のシンガポールや東南アジアからの撤退などがその例です。
英語公用語化 英語
英語公用語化の英語というのは、あくまでも最低限度の意思疎通ツールに過ぎません。企業がグローバル化して、地球規模で、市場を開拓するには、それぞれの土地の土着言語である母国語で、ドメスティックな文化や価値観まで理解しなければ、企業として支持されない可能性があります。
その理由は、西欧社会のモデルである効率社会の言語が英語であり、近代から現代にかけては右の効率社会そのものが、衰退期を迎えている点に求められます。西欧社会の文化や産業の純粋培養が、いままではアメリカを中心に行われてきました。したがって、専門的知見は医学であれ、経済学であれ、極端な言い方をすれば、日本文学であれ、アメリカの言語である英語による論文を書かなければ、専門的知見として認められなかったのです。
しかし今後は、西欧社会にみる効率社会に、様々な土着民の排除や、土着民への非民主的な扱いの側面が見いだされ、様々な問題の温床となる契機が見いだされようとしています。この効率社会の究極であるグローバル社会は、その修正的側面を迎えている時代です。イギリスのEU離脱は、そのような修正的側面といえます。
かつてラテン語が、西欧社会において、公用語とされた時代がありました。ラテン語が文法的に優れていて、複雑な現象を正確に伝える言語として、公用語的に扱われていました。ただラテン語ができない人々との格差社会が生じてしまい、その修正革命として出てきたのが、ルターによる宗教革命です。ルターによれば、ラテン語を読めない人々がいるから、ラテン語を使う者たちが支配者となって、免罪符を高価な値段で売りつけるなどの、歪曲化した信仰が生まれてしまったとして、当時の土着語であるドイツ語やフランス語による聖書の執筆を命がけで行いました。
歴史は繰りかえすといいますが、土着言語を無視しては、世界レベルで格差社会を到来させることになりますし、真の意味で、その土着民を理解することは不可能です。このような自覚から、グローバリズムに一定の歯止めがかかり始めたのが、今日の地球的規模での事象です。
このような視点からは、英語は重要ですが、それ以上に研究されなけらばならないのが土着語である母国語です。
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英語 公用語 企業 数
世界の企業の中で、社内公用語を英語としているグローバル企業は、世界全体の企業の25%にあたります。日本において、社内公用語を英語化した企業は、数社にすぎません。楽天、ユニクロ、株式会社SMKCくらいが、厳密な意味での社内公用語英語化を実施している企業です。そのほかの企業は、社内公用語英語化にむけて準備中というのが、正確な捉え方になります。
こうしてみると、社内公用語英語化は多くの企業が、採用している国際標準規格とまでは、いきません。ただし英語が重要であるという認識をしている企業が多いと見るのが、正確な実相になります。
公用語化するとなれば、社員の教育も含めて、時間のかかる資源投資になります。制度として、公用語化しないまでも、実際の会議や商取引で、英語を使わせて、社員の英語のレベルを上げていきたいという企業も多いと分析できます。
公開日:
最終更新日:2017/06/04